

大会最終日を迎えたこの日も、徳之島の空には美しい朝日が昇った。ほんのりと赤く染まる水平線をバックに、会場の花徳海岸にはすでに観客と選手たちが集まり、熱気と緊張感が入り混じる独特の雰囲気が漂う。昨日よりもやや風の影響があり、早朝の空気は少しひんやりとしていた。会場に到着してみると、面はざわつきながらもサイズは胸~肩、時折それ以上のセットも入り、むしろパワフルさを増した印象。南寄りのうねりが加わったことでブレイクの形も前日までとは変化し、戦略の組み立てがより重要となった。
朝の満ち込み時は、真ん中を流れるカレントを境に右側で割れるライトが勝負の場になっていたが、この日はカレントの沖からつながる波がインサイドでリフォームし、長く乗れるコンディションへ。さらに会場右側のレフトもフェイスの張る波が続き、しっかり選べば2~3ターン、特に大きな2ターンを入れることが勝敗の鍵となる展開が予想された。ギャラリーも「今日はドラマが起きそうだ」と期待に胸をふくらませていた。
競技は予定より少し遅らせ、午前8時にファーストコール。8時半から女子セミファイナルで最終日の戦いが幕を開けた。

Women's Semifinals
Heat1は、今シーズン好調を維持する川瀬心那と、徳之島を地元とする青山コト。観客席には青山の仲間や家族、町の応援団が多く詰めかけ、地元選手への声援が一際大きく響いた。先に仕掛けたのは青山。レフトの波をインサイドまで丁寧につなぎ1.43をスコアし、会場から拍手が起こる。続いて川瀬がライトをキャッチし、スピードに乗ったターンで4.00をマーク。その直後、アウトからレフトを捉え、ターンを繰り返しインサイドまでつなぎ切ったライディングで6.67という高得点を叩き出す。青山も地元の意地を見せるようにレフトに乗り返すが、1.30止まり。残り3分、川瀬がライトでバックサイドの鋭い1発を決め、4.07を追加。最終的にトータル10.74で川瀬が快勝。敗れた青山も堂々の3位に輝き、会場は大きな拍手と地元ならではの温かい空気に包まれた。



Heat2は吉田カコと奄美大島から参戦の山田カナ。
最初に動いた吉田はバックサイドで鋭い3ターンを決め、いきなり5.83を叩き出す。さらにライトで深いボトムターンから大きな縦へのリッピングを繰り出し、5.67をマーク。序盤からリードを固める。山田はじっくりと波を待つ戦術を取るが、形のいいレフトを掴んでも1点台に留まり、なかなかスコアを伸ばせない。中盤、吉田は再びグッドウェーブを掴み、6.83を追加。トータル12.66とし、山田を完全にコンビネーションに追い込む。最後まで果敢に波を探した山田だったが逆転はならず、吉田がファイナル進出を決めた。



Men's Semifinals
Heat1は小林圭と大音凛太。
今シーズン絶好調の小林は、この日も序盤から積極的に波に乗る。4.33と3.83を揃えると、さらにライトでスプレーを飛ばすターンを連続し4.80をマーク。観客が沸いたのは残り3分、エアーリバースをクリーンに決めて5.83を加点。ヒートトータルを大きく伸ばし、圧倒的な強さを見せつけてファイナルへ。大音もバックサイドで攻め続けたが、大きなスコアには結びつかず敗退。それでもここまでの勝ち上がりは観客から大きな称賛を集めた。


Heat2は山中海輝と岡村康介。
序盤から互いに3点台を重ねる接戦。山中が4.20を追加し主導権を握るが、残り3分でドラマが訪れる。岡村が狙いすましていたレフトをキャッチ。縦へのバックサイドアタックを連発し、観客を湧かせるライディングを見せる。この波に5.17が与えられ逆転成功。山中は反撃を試みるも波に恵まれず、岡村がファイナル進出を決めた。


Women's Final
女子ファイナルは川瀬心那と吉田カコ。遠征も共にする仲の良い2人だが、ここではライバル同士として真剣勝負。
川瀬は開始直後から積極的に攻め、5.50と3.83を揃えて優位に立つ。吉田もバックサイドで3.33、さらに残り10分には4.17をマークし差を縮めるが、逆転に必要なスコアを掴めない。終盤にはファーストプライオリティを持つ川瀬がしっかりと吉田をマークし、追撃を許さない。会場には「ここでも強い!」という声が上がり、川瀬が徳之島で2連勝を達成した。試合後は「大好きな徳之島で地元の皆さんに支えられて勝てたことが本当に嬉しい」とコメント。笑顔で地元の子どもたちと記念撮影に応じる姿が印象的だった。




Men's Final
最終戦を飾る男子ファイナルは、小林圭と岡村康介。小林にはジャパンレッグQS3連勝がかかり、岡村にとってはキャリア最高リザルトを狙う大舞台。
開始早々、小林が3.67と5.83を揃えてリード。岡村も負けじとレフトで4.67を返すが、小林は4.97を加えさらに差を広げる。中盤、岡村はバックサイドで二発の大きなリッピングを決め、6.10をマーク。会場から大歓声が沸いたが、小林は直前に5.47を出しており逆転ならず。それでも最後まで気を抜かないのが小林。残り時間わずかのところでライトの波にテイクオフ。縦への鋭いアプローチからレイバックターンで締め、6.67をスコア。勝負を完全に決定づけ、国内QS2000で圧巻の3連勝を果たした。
「世界自然遺産・徳之島での試合は特別な経験。3勝できるシーズンはこれまでなかったから本当に嬉しい。自分のプロセスを信じて、残りの大会もいい結果を出せるよう頑張りたい」と語った。




世界自然遺産の島・徳之島で開催された「Tokunoshima Town Pro QS2000」は、3日間を通じて波に恵まれ、国内外の若きトップ選手たちが熱戦を繰り広げた。観客席では地元の子どもたちが憧れのまなざしで選手を応援し、サーフィンを通じて島の未来につながる文化交流が生まれた。
「海しかない」と町が語る徳之島で、サーフィンが地域の誇りとして根づき始めている。この大会で得られた経験は、間違いなく選手たちの記憶と共に島の歴史に刻まれるだろう。再びこの美しい島で大会が開かれる日を願いながら、Tokunoshima Town Pro QS2000は幕を閉じた。







Text / @Dai Wako
Photo / @charfilm